「Slackを入れたけど、結局メールに戻った」 「kintoneを契約したけど、ほぼ誰も触っていない」 「Notionで情報共有を整えたかったのに、いつの間にか個別のExcelに戻っていた」。
こうした話を、ここ数年で本当によく耳にします。話を聞いていくと、決まって出てくる言葉があります。
「うちにはツールが合わなかった」
でも、私たちが現場に入って一緒に整理させていただくと、見えてくる結論は別のところにあります。
ツールが悪いのではない。業務に合わせる設計が抜けていただけです。
今日は、その話を書きます。
ツール導入が失敗する、3つのパターン
中小企業でツール導入が浸透しないケースには、ほぼ共通する3つのパターンがあります。
パターン1: 「とりあえず入れる」
「他社が使ってるから」「便利らしいから」「補助金が出るから」。理由がツールの側にあって、自社の業務の側にない状態で導入してしまうケースです。
典型は、契約した翌週から使い始めようとすること。業務のどこに当てるのか、誰が中心になって動かすのか、既存のやり方とどう接続するのか、何も決まっていないまま現場に降りる。当然ながら、現場は「いつもの仕事」を優先します。新しいツールは、放置されます。
パターン2: 「全員に一律で強制」
「社内ルールでこのツールを使うことになりました。来週からよろしく」と一律に降ろすケースです。
これも失敗します。社内には複数のチームがあり、それぞれの業務スピード・データの種類・関わる人が違うからです。営業チームと制作チームと管理部門に同じツールを同じ使い方で強制すると、誰かにはハマっても、誰かには邪魔になります。「邪魔」と感じた人から離脱していき、やがて全体が形骸化します。
パターン3: 「設定をそのまま使う」
ツールは便利な道具ですが、「うちの会社用」に設定して初めて道具になるものが多いです。
kintoneも、Slackも、Notionも、デフォルトの設定はあくまで「最大公約数」。チャネル設計、権限設計、テンプレート、自動化、外部連携。こうしたカスタマイズに人と時間を投じない限り、そのツールは「汎用のフリースペース」のままになります。社内では「結局便利じゃないね」という共通認識が広がり、誰も触らなくなります。
ツールは悪くない、設計の不在が問題
3つのパターンに共通するのは、ツールの選定よりも、業務に合わせる設計に投資していない点です。
これはツール会社の責任ではありません。彼らは汎用の道具を作っています。汎用の道具を固有の業務に当てはめる仕事は、買った側の責任範囲です。そして多くの中小企業では、その仕事を誰がやるのかが社内で空席になっています。
ツールを入れる仕事と、ツールを業務に合わせる仕事は、別の仕事です。
ここが分かっていないと、何度ツールを入れ替えても結果は同じになります。
同じkintone、A社で浸透、B社で形骸化
実例で書きます。NUXILがご相談を受けた中で、まったく同じツール(kintone)が、A社では浸透し、B社では形骸化した、というケースがありました。
A社の進め方:
- 「顧客管理を一元化する」という目的を最初に決めた
- 既存のExcel運用のフローを書き出し、kintoneに置き換える順番を3段階に区切った
- 第1段階で「営業の見込み客リスト」だけを移行
- 営業3名が使ってみて、慣れたら次の段階へ
- 段階ごとに、現場の意見でフォームを修正
B社の進め方:
- 「全社でkintoneを使う」と決めた
- 既存業務との接続は「使いながら考える」
- 1週間後、全部署に「明日から使ってください」と通達
- フォームはデフォルト設定のまま
A社は3ヶ月で日常業務になりました。B社は1ヶ月で「結局Excelに戻った」となりました。
ツールは同じです。違うのは、業務に合わせる設計に時間を使ったかどうかでした。
NUXILがやっていること
私たちがご支援する時、最初にやるのはツールの提案ではありません。業務の流れを聞き、書き出し、どこが本当の課題かを言葉にすることです。
その上で、こう進めます。
- 既存のExcelやメールで十分な部分は、無理に置き換えない
- どうしても置き換えたほうが効く部分だけ、ツールに移す
- 一気に全部ではなく、段階を区切って導入する
- 各段階で「効いたかどうか」を現場の声で確認する
これだけのことです。特別なノウハウではありません。でも、これを誰がやるのかが空席のまま導入すると、ツールは浸透しない。この役割を担うのが、NUXILの仕事の一つです。
AI Sprintで「効くかどうか」を見る
新しいツールを本格導入する前に、「効くかどうか」を2〜3週間で確かめる進め方もあります。NUXILが提供しているAI Sprintは、まさにこの目的で設計しました。
- 「一番効きそうな業務」を1つだけ選ぶ
- そこだけツール化・自動化した動くものを作る
- 1〜2週間、実際の業務で試す
- 効くと判明したら次の段階へ、効かなければやめる
いきなり全社で年間契約を結ぶより、25万円で動くものを試すほうが、損失は小さく、判断はずっと早くなります。
結論:道具より先に、業務を見る
ツール導入で失敗してきた経営者の方には、ぜひ一度この問いを立ててほしいと思います。
そのツールを入れる前に、自社の業務を言葉にしましたか
業務を言葉にできれば、ツールは選べます。ツール選びを先にすると、そのツールに業務を合わせることになり、現場が壊れます。
「過去にいくつかツールを試したけど、どれも浸透しなかった」という経営者の方は、まずは雑談ベースで構いません。自社の業務のどこに本当の課題があるかを一緒に言葉にするところから、ご一緒できます。