こんにちは、山上です。

AIがすごい。毎日のように、そんなニュースが流れてきます。新しいモデルが出た、人間の試験を超えた、また仕事が置き換わる。見ていると、世界がものすごい速さで変わっている気になります。

ただ、ふと自分の身の回りを見回すと、景色がずいぶん違う。今日はそのギャップと、その先で何が大事になるのかを、少し考え直してみました。

「チャッピーに人生相談」が、いまの普通の使い方

周りの、ITが本業ではない人たちに「AI使ってる?」と聞くと、返ってくる答えはだいたい決まっています。

「チャッピー(ChatGPT)に人生相談した」
「返信に困ったとき、Geminiにどう返せばいいか聞いた」
「今日の献立を考えてもらった」

これはこれで、立派な活用です。実際に役に立っている。でも、よく言われる「AIで業務が丸ごと変わる」「会社の仕組みが作り替わる」という話とは、だいぶ距離があります。

世間の多くの人にとって、AIはまだ「ちょっと賢い相談相手」です。検索の延長線上にある、便利な話し相手。そこから先の「自分の仕事を作り替える道具」まで踏み込んでいる人は、まだほとんどいません。

同じ「やばい」でも、見ているものが違う

ここで、ひとつのズレが生まれます。

僕らのような作る側の人間が「このAIやばい」と言うとき、見ているのはこういう景色です。指示を出すと数十分でツールが動く。社内の面倒な手作業がまるごと消える。一人でできることの範囲が、何倍にも広がる。

一方、人生相談にAIを使っている人が「AIやばい」と言うときに見ているのは、「自分の悩みに、それっぽく答えてくれた」という体験です。

同じ言葉なのに、中身がまったく違う。片方は道具としての破壊力に驚き、もう片方は話し相手としての賢さに驚いている。この差は、思っているよりずっと大きい。

そして厄介なのは、お互いに「相手も同じものを見ているはず」と勘違いしやすいことです。

この温度差は、しばらく埋まらない

正直に言うと、このズレはすぐには埋まらないと思っています。しばらく続く。

理由は以前にも書きました。AIをただの相談相手から「仕事を作り替える道具」に変えるには、ある程度の基礎知識と、何を任せられるかという見立てが要ります。そこは一足飛びにはいきません。

業界にいる僕らは、毎日触っているから感覚が更新され続けます。でも、本業が別にある人にとって、AIは数ある関心事の一つでしかない。日々追いかけているわけではない。だから差は開く方向に動きやすい。

これは、どちらが偉いという話ではありません。料理人が包丁にこだわるのは当たり前で、家でたまに料理する人がそこまで気にしないのも当たり前。ただ、立っている場所が違う。それだけのことです。

使う前提で話す人は、たぶん置いていかれる

問題は、僕らのような「使う側」の人間が、この温度差を忘れたときに起きます。

もうAIなんて当然でしょう。使っていない方がおかしい。そういう前提で話を進めると、相手は黙ります。分からないとは言いづらいまま、話だけが先に進んでいく。気づけば、いちばん助けが要る人を置き去りにしている。

僕は、これはやり方として間違っていると思っています。AIを使えない人を見下して、使える人だけを相手に商売をする。短期的には楽かもしれません。でも、世の中の大半はまだ「チャッピーに人生相談」の側にいる。そこを見ないふりをした商売が、長く続くとは思えない。

それより、その人たちと同じ目線に立って、「今どこで困っていますか」から始められるかどうか。価値はそこにあると、僕は考えています。

結局、最後に効くのは人の繋がり

ここまで考えてきて、改めて思ったことがあります。AIが進むほど、人と人の繋がりがむしろ効いてくる、ということです。

AIは、聞けば答えてくれます。でも、「何を聞けばいいか分からない」状態の人には、まだ寄り添ってくれません。その手前にいる人に、「たぶん、あなたが困っているのはここですよね」と翻訳して渡す。その役割は、結局のところ人にしかできない。

僕らNUXILがやっているのも、煎じ詰めればそこです。最新のモデルを使うこと自体が価値なのではなく、AIと専門的な会話ができない人の隣に立って、その断絶を埋める。技術の話というより、人と人の間に立つ仕事に近い。

AIがどれだけ賢くなっても、誰かが誰かを気にかける、その繋がりまでは肩代わりできません。便利になるほど、人が直接向き合って話すことの価値は、むしろ上がっていく気がしています。

だから、これからどう生きていくか。僕の答えは、案外シンプルです。道具は遠慮なく使い倒す。人との繋がりは、前より大事にする。その両方をやる。

もし今、「AIがすごいのは分かるけど、自分には縁遠い」と感じているなら、それはまったく恥ずかしいことではありません。そこから一緒に始められます。難しい話は抜きにして、まずは雑談から。気軽に声をかけてください。