こんにちは、山上です。

先日、Anthropic から「Claude Cowork がスマホとウェブからも使えるようになった」という発表がありました。これまでパソコンのアプリでしか動かなかったものが、外からでも触れるようになった、という話です。名前は聞いたことがあっても、Cowork が何なのかはピンと来ない方が多いと思います。今日はそこから書いてみます。

AI の使い方が、また一段ずれた合図だと感じたからです。

そもそも、Coworkとは何か

ふだん多くの人が AI に触れるのは、チャットです。質問を投げると答えが返ってくる。文章を直してもらう、要約してもらう、相談する。一往復のやり取りが基本でした。

Cowork は、そこから役割が変わります。チャットが「相談相手」だとすれば、Cowork は「仕事を任せる相手」です。ひとつのタスクを渡すと、ファイルやカレンダー、メール、メッセージアプリ、ウェブ、そのほか自分がつないだ道具を横断して、終わるまで動き続ける。「調べて、まとめて、下書きまで作っておいて」を、一気通貫でやってもらう感覚に近い。

チャットが会話なら、Cowork は依頼です。この差は小さく見えて、実際に使うと印象がまるで違います。

何が変わったのか

今回の発表で変わったのは、動く場所です。これまではパソコンのアプリを開いている間しか使えませんでした。それが、スマホとウェブからも触れるようになった。ポイントは3つあります。

ひとつ目は、デバイスをまたげること。デスクのパソコンで仕事を頼み、外出先のスマホで進み具合を確認し、できあがったものをどこからでも受け取れる。

ふたつ目は、パソコンを閉じても動き続けること。端末がオフラインでも、決めた時刻に自分で作業を始める。たとえば月曜の朝6時に「今日の打ち合わせ準備をしておいて」と仕込んでおけば、関係するメールのやり取りや議事録、最新のニュースを読んで、当日のブリーフィング資料とメールの下書きまで作っておいてくれる。出社したら、もう手元にある。

みっつ目は、勝手に突き進まないこと。判断が要る場面に来ると、Cowork はスマホに質問を送ってきます。こちらが承認するまで、外には何も出さない。任せきりにも見えて、要所では必ず人間に判断を戻す設計になっている。ここが、地味だけれど大事なところだと思っています。

なお、ウェブとデスクトップではチャットと Cowork が一つにまとまり、途中の成果物も両方で共有されるようになりました。まずは Max プランから、数週間かけて順に開かれていく形です。

使っているのは、開発者だけではない

もうひとつ、発表と一緒に出た数字が面白かった。Cowork の使われ方の9割以上が、ソフトウェア開発ではなかったそうです。いちばん多かったのは、業務のオペレーションとコンテンツ制作。

AI のエージェントと聞くと、エンジニアが自動でコードを書かせる道具、という印象を持つ方もいると思います。実際に人が任せていたのは、そうではなかった。資料をまとめる、下調べをする、定型の連絡をさばく。普通の会社の、普通のデスクワークです。プログラムを書ける人のための特別な道具ではなく、事務仕事を肩代わりする相手として使われている。

作る側の私から見ても、これは腑に落ちる話でした。伸びしろがいちばん大きいのは、毎日発生していて、誰かの時間を静かに削っている作業のほうだからです。

便利になるほど、難しくなること

ここまで読むと、道具の側はもう十分そろったように見えます。スマホから頼めて、寝ている間に動いて、要所では確認してくれる。あとは使うだけ、と。

ところが、実際に会社で回そうとすると、別の壁が出てきます。「何を、どう任せるか」を決めるところです。

たとえば「打ち合わせ準備をしておいて」と一言で頼んでも、どのメールを読むべきで、何を資料に入れて、何を入れてはいけないのか。判断が要る場面はどこで、そこで Cowork に何を聞き返させるのか。これを詰めないまま渡すと、それらしいけれど的を外した成果物が返ってくる。道具が賢くなっても、任せ方の設計は自動では埋まりません。

AI に詳しくない方ほど、ここで手が止まります。ChatGPT に相談するくらいはできても、自分の業務を分解して「この部分をこう任せる」まで一人で組み立てるのは、別の技術がいる。使えるようになったこととは、まだ距離がある。

私たちがやっているのは、まさにこの距離を詰める仕事です。あなたの業務のどこに、こういうエージェントが効くのか。何を任せて、どこで人間が判断を握るのか。現物を動かしながら、一緒に線を引いていく。道具を渡して終わりではなく、あなたの会社の言葉で動く形にするところまでを引き受けます。

Cowork のような自走する AI を、自分の仕事でどう使えるか試してみたい。そう感じた方がいたら、声をかけてください。まずは一つ、毎日発生している面倒な作業を選んで、任せられる形になるか一緒に見てみるところから始められます。