「Webシステムを作りたい」と相談したら、見積もり300万円・納期6ヶ月で返ってきた。1ヶ月かけて要件定義書を作って、3ヶ月後にようやくデモを見たら、思っていたものと違った。追加費用と納期延長で、結局1年がかり。
中小企業の事業責任者の方から、こうしたお話を本当によく伺います。今日は、なぜSI業界がこういう構造になっているのか、AIによってこの構造がどう崩れ始めているのかを、現場で長年見てきた立場から書きます。
なぜ見積もりは膨らみ、納期は伸びるのか
従来のSI(システムインテグレーション)業界の見積もりが大きくなる理由は、いくつもあります。
まず人月計算という考え方。「エンジニア1人が1ヶ月でできる量」を単位に、何ヶ月分かかるかで金額が決まる仕組みです。月単価70〜100万円のエンジニアが3〜4人で半年動けば、自然と数百万〜千万円規模になります。
次に仕様変更のリスクヘッジ。「途中で仕様が変わるかもしれない」「想定外のことが起きるかもしれない」と考えて、見積もりにバッファを乗せる文化があります。20〜30%上乗せが当たり前です。
さらに社内承認・営業手数料・PM工数。実際にコードを書く時間以外に、提案書作成、社内決裁、PM管理、テスト体制構築といった「動かしてもらうための工数」が積み上がります。
結果として「見積もり300万円、納期半年」が標準になります。それ自体が悪いわけではありません。大規模で複雑なシステムを安全に作るためには、こうした体制が必要な場面もあります。
ただ、中小企業の業務には、過剰な構えが多い
問題は、中小企業の現場で必要なシステムにも、この構えが適用されてしまうことです。
たとえば「FAXをAIに読み取らせて社内システムに転記したい」というご相談。これは、SI的に組むと300万円・半年です。要件定義書、画面設計、データベース設計、テスト計画。全部やっていたら、確かにそうなります。
でも、実際に現場に立ってみると、もっと小さく組める可能性があります。
- 読み取り精度が95%あれば、残り5%は人の確認で十分
- 1日100件しか流れない業務なら、サーバーは小さくていい
- 既存のExcel運用と並行運用すれば、いきなり全切り替えはしなくていい
こうした現場の解像度を見ずに「全部を堅牢に作る」と、300万円になる。一方、解像度を上げて必要な範囲だけに絞ると、数十万円で動かせることがあります。
AIで、開発工程の何が変わったか
ここ1〜2年で、現場の作り方は大きく変わりました。
私たち自身、毎日AIを使って開発しています。コードを書く時間が、半分以下になった。これは率直な実感です。
- 過去に書いた似たコードを参考に、新しいコードの叩き台を出してくれる
- API仕様書を読み込ませて、それに沿った実装をしてくれる
- バグの当たりを付ける時間が圧倒的に短い
- テストコードの雛形を一気に出せる
これらは「動くものを作る」までの時間を、確実に短縮しました。
ただし誤解しないでください。「AIで誰でも作れる時代」とは違います。動くものを作るのは速くなったけれど、業務で安心して回せるまで仕上げる工程はまだ人間の側に残っています。詳しくは別記事に書きましたので、興味があればそちらも。
「先に動かす」で要件を確定する
AIの効果で開発が速くなった結果、私たちの進め方も変わりました。
従来の流れ:
- 要件定義書を作る(1ヶ月)
- 設計書を作る(1ヶ月)
- 開発する(3ヶ月)
- テストする(1ヶ月)
- 「思ってたのと違う」が発覚
新しい流れ:
- ざっくり方向を擦り合わせる(数日)
- 動くものを作る(2〜3週間)
- 業務で触ってもらう
- 「ここは違う」「ここは効く」が現物の前で確定する
- それを踏まえて本実装に進む
紙の上で何ヶ月議論するより、動くものを見てから決めたほうが早い。これがAI時代の合理的な進め方です。
NUXILがやっていること
私たちは、これをAI Sprintという形でご提供しています。
- 第1段階:2〜3週間、25万円から
- 業務に当てる「動くもの」を実装
- 実際の業務で1〜2週間触っていただく
- そこから「広げる/直す/やめる」を判断
第2段階以降に進んでも、段階的に投資判断ができる構造を残しています。300万円を一発で投じるのと、25万円ずつ積んで判断していくのでは、リスクの取り方が全然違います。
SI業界の「数百万円・数ヶ月」が悪いわけではありません。規模に合わせて、適切な構えを選ぶ。これが、中小企業の事業責任者にいま必要な視点だと感じています。
「依頼してみたいけれど、見積もりが膨らみそうで踏み出せない」と感じていらっしゃるなら、まずは雑談ベースで構いません。いま動くものを作ったら、いくらでどのくらいでできるかを、お話の中でお見せできます。