こんにちは、山上です。
AIのニュースが、毎日どこかから流れてきます。新しいモデルが出た、また記録を更新した。そのすぐ隣に「AIバブルはいつ弾けるのか」という記事が並ぶ。両方を毎日読んでいると、結局どっちなんだと言いたくなります。
今日は、その整理を私なりに書いてみます。作る側から見て、いま何が起きていて、この先どうなりそうか。
性能は伸びているのに、差を感じなくなった
AIは確実に賢くなり続けています。ベンチマークの数字は上がるし、一度に扱える情報量も増えた。そこは事実です。
ただ、普通に使っている人の側から見るとどうでしょうか。文章を要約させる、メールの下書きを作らせる、調べ物をまとめさせる。この程度の用途なら、去年のモデルと今年のモデルで体感の差はほとんどありません。どちらも十分に賢い。
性能の伸びが止まったのではなく、伸びている方向が日常の使い方から離れていった、という言い方のほうが近い。難しい問題を解く力や、ひとりで長時間作業を続ける力が上がっても、要約が劇的に上手くなるわけではないですから。多くの人にとって、AIはすでに「これで足りる」の線を越えています。
バブルの話は、たぶんここから始まっています。
お金の流れだけが、まだ加速している
一方で、投資の側は止まっていません。NVIDIAのGPUをどれだけ確保できるかの争奪戦になっていて、計算資源に桁違いの金額が流れ込んでいる。AIに投資すると言うだけで期待が乗る空気もあります。
その先で何が起きているか。多くの人は無料のまま使い、有料プランの入口で止まります。「便利だけど、毎月払うほどか」と考えたところで手が離れる。会社でも同じです。試すところまでは進んでも、全社員分のライセンスを買う話になった途端、決裁が止まる。
作る側には莫大なコストがかかり、使う側は月数千円をためらう。この差が埋まらないまま投資だけが膨らんでいるなら、どこかで調整は入ります。私は「弾ける」と煽りたいわけではありません。ただ、いまの熱量がこのまま続く前提で経営判断をするのは危ない。そう思っています。
「置き換わる」の裏側にある固定費
イーロン・マスクをはじめ、影響力のある人たちが「ほとんどの仕事はAIに置き換わる」と言っています。技術としては、いずれそうなる領域も出てくるでしょう。
ただ、置き換わった後の会社を想像してみてください。AIは動かすたびに課金が発生します。使えば使うほど積み上がる。人を減らした代わりに、毎月確実に出ていくコストが乗る構造です。しかも人件費と違って「今月は少し抑えよう」が効きにくい。業務に組み込むほど、止められなくなります。
そうなったとき、そのコストを黙って払い続ける会社がどれだけあるか。私が現場で見ている限り、多くの中小企業はここで冷静になります。全部を置き換えるより、いまいる人が3人分動けるようにするほうを選ぶ。判断としては、圧倒的にこちらが多い。
平均点までは速い。止まるのはその先
私たちは、AIを使って実際に動くものを作っています。ホームページも、社内の仕組みも。デザインもコーディングも、毎日AIと一緒にやっている。だから、できることとできないことは体で分かっているつもりです。
速いのは、平均点にたどり着くまで。一般的に正解とされている形、よくあるレイアウト、定石どおりのコード。この領域は本当に早くなりました。下書きにかかる時間は確実に減っています。
問題はその先です。実際の案件になると、「悪くないけど、これじゃない」が必ず出てくる。この会社の空気に合わない、この業界のお客さんはこの見せ方をしない、この一言がないと刺さらない。感性の話に見えて、正体は文脈の話です。目の前の会社をどれだけ知っているかで決まる。そこが埋まらないまま出てきたものは、平均点のまま止まります。
ゼロから一を生み出すところも、まだ人の側に残っています。世の中にある正解を組み替えるのは得意でも、この会社だけの答えを最初に置くのは別の作業です。
それでも、なくならないと思っている
では将来、AIがその文脈まで読めるようになったらどうなるか。技術的には、いつか届くかもしれません。
そこで効いてくるのが、さっきの費用の話です。人ひとり分の判断をAIに肩代わりさせようとすると、必要な計算量はいまの比ではない。開発した側は当然それを回収しにきます。高性能になるほど、使う値段は上がる。そのとき経営者が並べるのは、性能の比較表ではなく請求書です。この仕事に毎月いくら払うのか、人に頼むのと比べてどうか。
だから私は、私たちの仕事がなくなるとは思っていません。形は変わります。手を動かす時間は減り、どこにAIを効かせるかを決める時間が増える。それでも、目の前の会社の事情を聞いて、判断して、動くものにするところは残る。むしろ、そこしか残らない。
大事なのは、どう付き合うかのほう
AIがこの先も賢くなるのは間違いありません。同時に、投資の熱がどこかで落ち着く可能性も高い。両方が同時に起きます。
そのときに困るのは、極端に振れていた人です。全部AIに置き換わると信じて準備しなかった会社も、どうせ一過性だと決めて何も触らなかった会社も、同じように足を取られる。
いま考えるべきは、AIを信じるか疑うかではありません。自分の会社のどの仕事なら任せられて、どこは人が握るのか。その線を、自分の言葉で引けるかどうか。熱が引いても残る問いは、たぶんこれだけです。
うちの場合はどこから触るのが正解なのか。そう思った方がいたら、声をかけてください。毎日発生している面倒な作業をひとつ選んで、任せられる形になるか、一緒に見てみるところから始められます。