こんにちは、山上です。
先日、とある動画を見ました。生成AI時代をどう生き抜くか、というテーマで、ある人物が語っているものです。話そのものも面白かったのですが、一番刺さったのは、ひとつの指摘でした。
「AIが普及しても、基礎知識のある人とない人の差は、縮まるどころか広がる」
ここ最近、現場で感じていたことを、きれいに言葉にされた気がしました。今日はこの一点を、私たちの仕事の感覚で噛み砕いてみます。なぜ、AIに全部任せても作りきれないのか。できるだけ、たとえ話で。
「AIがあれば、誰でも作れる」は半分だけ本当
AIを使えば、コードが書けない人でも、それらしいアプリやツールが出てくる。これは事実です。実際、社内の困りごとを伝えただけで、画面が動く試作が数十分で立ち上がる。数年前なら考えられなかった速さです。
ただ、ここには続きがあります。「それらしく動くもの」が出てくることと、「実際の業務で毎日使えるもの」が完成することの間には、まだ深い谷があります。そして、その谷を越えられるかどうかを決めているのが、基礎知識の有無でした。
全自動の調理器を、料理初心者が使ったら
たとえ話をします。
最新のAIは、材料を入れてボタンを押せば料理が出てくる全自動調理器のようなものです。レシピ通りに放り込めば、見た目はちゃんとした一皿が出てきます。
問題は、味がおかしかったときです。
塩が足りないのか、火を入れすぎたのか、そもそも材料の組み合わせが悪いのか。料理の基礎がある人は、一口食べれば見当がつきます。だから直せる。一方、基礎のない人は、何かが変だと感じても、どこをどう変えればいいのか分からない。もう一度ボタンを押すしかありません。
AIで作るプログラムも、まったく同じです。出てきたものが少しおかしいとき、原因の見当がつく人は、AIに的確な指示を出して直していけます。見当がつかない人は、「うまく動かないので直して」と言い続けるだけ。同じ場所をぐるぐる回って、いつまでも完成しません。
なぜ、基礎がないと「直せない」のか
プログラムは、小さな部品の組み合わせでできています。データを受け取る部品、計算する部品、画面に出す部品。どこで何が起きているか、頭の中に地図がある人は、不具合が出た瞬間に「ここが怪しい」と当たりをつけられます。
地図がない人は、そもそもAIが出してきたものが正しいのかどうかすら判断できません。動いているように見えるだけで、裏でデータが壊れていても気づけない。これは、業務で使うシステムでは致命的です。
AIは指示の通りに作ります。でも、その指示が的を外していたり、出てきた答えの検品ができなかったりすると、品質は担保されません。基礎知識とは、この「的確に指示し、出てきたものを検品する力」のことだと考えています。
だから、ベテランの逆襲が起きる
面白いのは、この流れが必ずしも若い人に有利ではない、という点です。
サーバーの構成、セキュリティ、システム全体の組み立て方。こうした全体像を長年かけて体に入れてきた40代、50代のエンジニアがAIを手にすると、生産性が一気に跳ね上がります。手を速く動かす作業はAIが肩代わりし、人間は判断と設計に集中できる。基礎が厚い人ほど、AIという増幅器の恩恵を大きく受けます。
「AIに仕事を奪われる」という語られ方をよく見かけます。実際に起きているのは、その逆に近い現象です。基礎のある人の仕事が、AIによって何倍にも膨らんでいます。
AIは魔法の杖ではなく、増幅器
ここまでをひとことで言えば、AIは優秀な人をさらに優秀にし、そうでない人との距離を広げる道具だ、ということです。誰かを一足飛びに引き上げてくれる魔法の杖ではありません。すでに持っている力を、何倍にも増幅する装置です。
では、基礎のない人や会社は、この時代にどう向き合えばいいのか。答えは2つだと思っています。ひとつは、小さくていいので自分で手を動かし、基礎の手触りを少しずつ得ること。もうひとつは、基礎を持っている相手と組むことです。
私たちNUXILがやっているのは、まさに後者の役割です。AIという調理器の性能を引き出す、レシピと味見の側を引き受ける。お客様自身がAIを触っても作りきれなかった部分に、業務を理解したエンジニアの基礎を掛け合わせる。そうやって、「それらしく動くもの」を「毎日使えるもの」まで持っていきます。
AIは、確かにすごい。けれど、すごいのはあくまで道具です。その道具を本当に効かせられるかどうかは、使う側の基礎で決まります。もし、いまAIで何かを始めたいのに途中で行き詰まっているなら、足りないのはやる気でも予算でもなく、その基礎を一緒に持つ相手かもしれません。
AI活用やシステムづくりで「ここから先が進まない」と感じている方は、気軽に声をかけてください。どこに谷があるのか、一緒に見るところから始められます。