こんにちは、山上です。
最近、「DXの次はAX」という言い方を、あちこちで見かけるようになりました。AX。AIトランスフォーメーションの略です。DXがようやく言葉として馴染んできたところに、もう次の三文字が来た。そう感じている社長も多いと思います。
正直に言うと、新しい横文字が出てくるたびに、現場の経営者の本音は「で、うちは何から手をつければいいの」の一点に集約されます。今日はこのAXという言葉を、できるだけ売り文句から引きはがして、現場の言葉に翻訳してみます。意味、DXとの違い、そして一番知りたいであろう「どこから始めるか」まで。
AXとは、ひとことで何なのか
AXは、AIトランスフォーメーション(AI Transformation)の略です。AIを前提にして、仕事や事業のかたちそのものを作り直す取り組みを指します。
ポイントは「前提にする」という部分にあります。AIを便利な道具としてたまに使う、という段階の一歩先です。AIが判断したり、作業をこなしたりすることを最初から織り込んで、業務の流れを組み立て直す。そこまでいって初めてAXと呼ばれます。言葉としてはまだ新しく、定義も各社で少しずつ揺れていますが、芯にあるのは「AIありきで考え直す」という一点です。
DXと、何が違うのか
DXとAXは、地続きです。順番がある、と捉えると分かりやすい。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、アナログをデジタルに置き換える話でした。紙をデータにする。電話やFAXのやり取りを画面の上に乗せる。人間がやっていた手作業を、デジタルで効率化する。いわば、これから走るための道路を舗装するフェーズです。
AXは、その舗装された道の上で、運転そのものをAIに任せていくフェーズです。DXで貯まったデータをAIが読み、判断し、動く。人間は最後の意思決定と、AIへの的確な指示に集中する。同じ「変革」でも、DXが環境を整える話なのに対して、AXは整った環境の上で仕事のやり方を組み替える話だと考えると、違いが見えてきます。
道路を舗装するのがDX、その道を自動で走らせるのがAX。乱暴ですが、入口の理解としてはこのくらいで十分です。
なぜ今、AXと言われ始めたのか
理由は重なっています。ひとつは、DXである程度の土台ができた会社が増えたこと。クラウドが当たり前になり、業務のデータが社内に貯まり始めた。もうひとつは、生成AIが「使える」水準まで一気に伸びたこと。賢いだけでなく、文章を書き、表を読み、人と会話できるAIが、誰の手にも届くようになりました。
土台があって、その上で動く知能が来た。だから「次はAIで会社を変えよう」という掛け声が、自然と出てきます。流れとしては、まったく正しい。
ただ、ここで多くの会社がつまずく
問題は、AXの語られ方がやたらと大きいことです。
「全社をゼロから設計し直す」「会社全体を知能化する」。記事や講演でAXを語ると、だいたいこのスケール感になります。聞いた瞬間、社長の頭には別の声が浮かびます。「いや、うちはDXすら道半ばなんだけど」。壮大すぎて、自分ごとにならない。結果、言葉だけが宙に浮いて、何も始まらない。
これは、DXのときにさんざん見た光景でもあります。号令は立派、でも現場は動かない。旗を振るだけでは、仕事のやり方は1ミリも変わりません。
どこから手をつけるか。大きく考えて、小さく始める
ここからが本題です。AXを自分の会社で進めるなら、私はいつも同じことを言います。考えるときは大きく、始めるときは小さく。
最初の一歩は、全社改革の号令ではありません。現場の困りごと、たったひとつです。
たとえば、毎月手で打ち直している請求書の読み取り。問い合わせメールの一次対応。Excelに散らばった数字の集計。どれも地味で、どこの会社にもある作業です。このうちのひとつを選んで、AIに肩代わりさせる。うまく効いたら、隣の業務へ広げる。また効いたら、その隣へ。
この積み上げを続けると、半年後、一年後に、はっきりした変化が出ます。一つひとつ潰してきた結果として、業務の流れそのものが、以前とは別物になっている。判断の半分をAIが下書きし、人間は確認と決断に時間を使えている。これが、現場で実際に起きるAXの姿です。
ゼロから作り直したわけではありません。小さな改善を、業務の単位で積み上げただけ。けれど積み上がった総量が、会社のかたちを変えてしまう。壮大な設計図から入るより、こちらのほうがよほど現実的で、そして確実に進みます。
僕らがやっているのは、その積み上げの実装です
NUXILがお客さんと一緒にやっているのは、まさにこの「ミクロな改善の積み上げ」です。
AXという言葉を、概念のまま渡したりはしません。どの業務が一番効くのかを一緒に見つけて、AIで動く試作をすぐに作り、現物を触ってもらいながら育てていく。相談やレポートで終わらせず、実際に毎日使えるところまで持っていく。ここがコンサルとの違いです。
多くの会社が止まるのは、やる気でも予算でもなく、「AIと専門的な会話ができる相手がいない」という一点だと感じています。社長自身がChatGPTを触れても、その先の「業務に合わせて作り込む」には、業務を理解したエンジニアの手がいる。その手を貸すのが、私たちの役割です。
DXの次はAXだ、と急かされて、少し身構えているかもしれません。でも、やることは難しくありません。一番面倒な作業を、ひとつ選ぶ。そこから始めればいい。どの作業から手をつけると効きそうか、その見極めだけでも、一緒にやれます。気軽に声をかけてください。